反核平和、ノウモア原発。「黒い雨」と被曝を考える
ヒロシマ原子爆弾(原爆)と「黒い雨」
恐るべき放射能・・・“黒い雨”
いま、原爆「黒い雨」の被害認定が問題になっています。広島県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会事務局長 牧野一見氏の論文から一部を紹介します。(全国商工新聞2012年8月6日付け7頁平和・民主主義、「視点」記事より出典)
「広島の原爆は、爆発の瞬間に強烈な放射線を照射するとともに熱戦と衝撃波、爆風や火災で吹き上げられたほこりやちり、急激な気象変化に伴って降った「黒い雨」などに放射能を付着させ広範囲に降下させました。国が放射能被害を認めて国費で医療費を支給する被爆者健康手帳を交付しているのは、原爆投下時に広島市内にいた人、2週間以内に爆心から2キロ以内に入市した人、2週間以内に被曝者を救護したひとです。」と説明しています。
広島県と広島市が2008年に行った実態調査にもとづき、2010年に「黒い雨は国の指定地域の6倍の範囲に降り、未指定地域住民は被曝者に匹敵する健康不良状態である」との報告書を発表しました。同年、広島県と降雨域に含まれる3市5町の首長は連名で、政府に対し「新降雨域の全域を第一種健康診断受診者証交付地域に指定」するよう要望書を提出しました。 ところが、今年7月に出された政府・厚労省の検討結果は、原爆被害者の要請にも何一つ応じず、県市町の要望書をまったく認めていません。 これは、重大なことです。 牧野事務局長は、最後に強調しています。 「この経過の中で許せないのは、政府が1978年の残留放射能調査以後は何の調査も行わず、地域指定の非科学性は棚に上げて、学者や広島市と県の調査結果を『科学的・合理的根拠が明確でない』などとしてことごとく否認し、被爆地の拡大を拒否してきたことです。政府のこの態度は、米国政府言いなりに原爆被害を小さく見せて被爆者を見捨てるもので、福島原発事故や大飯原発再稼働への対応と共通するものです。」と結んでいます。
原発被害を小さく見せて、被曝者を見捨てるのか?
ここには、日本政府が戦後一貫して、対米従属のもとで放射能被害を隠したり矮小化する体質が如実に示されたものです。 このことは、東電福島第一原発の放射能大量放出、過酷事故についても、引き継がれていると指弾している訳で、きわめて重要な指摘です。 野田民主党政府は、フクシマ第一原発事故の原因の究明も、放射能被害者の調査、救済、全面医療支援と全面賠償なども置き去りにしたまま、大飯原発3,4号機のフル再稼働に暴走しました。 いま、最悪の安全神話の再構築に踏み出したわけです。
「原子力規制委員会」の5人の国会同意人事案は、これまでの原子力推進政策の責任者がゾロゾロです。「原子力ムラ」の中心人物に「規制」を担当させるもので、利用と規制の一体化を人事から進めるものだ。 「ブレーキとアクセルを同じ保安院が踏んだ結果が事故だった、また繰返すのか。もうたくさんだ」これが市民の声です。
とりわけ重大なのは、候補者に低線量被ばくリスクについての認識がなく、事故による住民被害・低線量被ばくの影響をもみ消そうとする行政の力を加速させることになるのではないでしょうか。

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